H医療センターは、約1,000床を有する地域中核病院です。
患者数の増加に加え、医療従事者の長時間労働や人手不足が常態化しており、業務効率化と安全性の両立が大きな課題となっていました。
特に、薬剤・リネン・検体などの院内搬送や、清掃・消毒業務は 感染防止の観点からも「人に頼らざるを得ない業務」とされ、 一方で現場スタッフの疲労・接触リスク増大を招いていました。
「人が減っているのに業務は減らない。少しでも自動化できないかと思い立ったのがきっかけでした」と、施設管理部長は語ります。
初期導入の段階では、複数メーカーのロボットがそれぞれ独立して稼働していました。
薬剤搬送、清掃、案内、リネン運搬――用途別にロボットを配置していたものの、 各社の管理アプリが異なり、運用が煩雑になっていたのです。
結果として、
といった問題が発生。
「ロボット導入=省力化」のはずが、実際には“ロボット管理のための労働”が発生していました。
株式会社ビルポは、病院の動線・用途・稼働時間を分析した上で、
RMF(Robotics Middleware Framework)とBILLMS(ビルムス)を活用した統合管理を提案しました。
導入時には、以下のような最適設計を実施
合計 47台 のロボットが、同時に院内各所で稼働しています。
これらをBILLMS上で一括制御することで、稼働状況・電力残量・タスク完了率などをリアルタイムで可視化。
特定のルートに渋滞が発生した際には自動で迂回ルートを再設定するなど、人を介さない自律的なオペレーションが可能になりました。
導入から半年後、H医療センターでは次の成果が得られました。
また、データ解析に基づいて最適化を繰り返すことで、
機器の故障率や充電トラブルも減少。
「最初はロボットが迷子になることもありましたが、いまでは“頼れるスタッフ”として現場に溶け込んでいます」と、看護部主任は笑顔で話します。
ビルポは、導入後も遠隔監視・メンテナンス・月次レポート作成まで一括でサポート。
PoC(概念実証)フェーズではロボットごとの動作安定性を比較し、 ブラシ摩耗、センサー感度、バッテリー消耗などの機種特性データを蓄積・分析して、より精度の高い稼働設計へとつなげています。
また、仮想空間シミュレーター「Gazebo」を活用し、新機種の走行性能を3Dモデル上で検証してから現場導入を実施。
事前に障害物検知や経路最適化を確認できるため、導入初期のトラブルを最小化しました。
H医療センターでは現在、清掃・搬送にとどまらず、エレベーター・自動ドア・照明制御との連携を進めており、将来的には「ロボットが病院全体の運用を支える仕組み」を目指しています。
株式会社ビルポ代表取締役・稲垣太一氏は次のように語ります。
「医療の現場は、人の手を必要とする作業が多い。
だからこそ、ロボットが担うべき“繰り返し業務”を明確に分離し、
人が本来のケアに専念できる環境を整えることがDXの本質です。」
H医療センターの事例は、単なる自動化ではなく、
「安全・効率・人材活用」の三要素を融合したDXモデルです。
現場ごとに異なる制約条件の中で、BILLMSとRMFを活用することで、
「止まらない病院運営」と「働きやすい職場環境」の両立を実現しました。